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技術士二次試験を終えて(5)

最後に、技術士二次試験に関する雑感を書いてみたいと思います。

 試験を行う側の人、あるいは論文を採点したり面接をする側の人たちと言っても良いでしょう。こういう人たちが、試験を受ける5~10人の受験者の中から1人をピックアップする場合にどんなイメージの人を選ぶかと言うことになります。

 技術者と言うのは、大体の場合「木を見て森を見ず」のタイプからスタートするのかなと思います。専門領域の限られたことに対しては非常に学識を持ち、問題解決能力も発揮します。しかし、技術士に求められている能力はそのような深い専門能力だけではなく、もっと幅広く全体を俯瞰できる力のようです。

 その意味で、二次試験で書く論文は決して学術論文のような内容ではなく、一つは書いた人の問題意識が読み取れる論文であり、更に書いた人の実務経験に裏打ちされた問題解決に至る道筋が示された論文だと思います。

 そしてあと一つ大事な点は、書いた人の考えがわかったと相手に思わせる文章力だと思います。専門的な内容まで突っ込んで理解してもらうことが目的ではなく、あくまでわかったつもりになってもらう力です。

 専門的な内容は、しようと思えばいくらでも際限なく 説明できます。しかし、それをすると文字数や時間が限りなく必要になってしまうので、その人の総合的な俯瞰力がわからなくなってしまいます。

 従って、大事な事はあまりに専門的な用語は用いない。論文であれば、多くの技術者が知っているであろう用語を用い、あるいは字ずらから比較的類推しやすい用語を用いることだと思います。カタカナ言葉も本当の専門家しか知らないような言葉は使わない方が良さそうです。

 むしろ大事なのは論理構成を示す日本語表現であり、それによってわかったふりをしてもらうことが必要だと思いました。セミナーの際に講師の先生からも言われましたが、読んでみて、何か引っかかったり、更に聞かないとわからないような内容だと振り落とされてしまう可能性が高いようです。

 以上書いた内容は、基本的に口頭試験の際も当てはまります。

なお、本などで読んだりすると、1日に平均何時間以上勉強しないとダメだとか、何百枚と鉛筆で書く練習をしなければダメだとか書かれていますが、私自身そういうので意識したのは、キーワード学習の項目数だけでした。
 あまりそういう見掛けの目標を意識し過ぎると、形だけの勉強になってしまいますので、大切なのは、自分自身としてどこまで納得できる勉強が出来るかということだと思います。

 

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