スキップしてメイン コンテンツに移動

総監的な課題解決方法

総合技術監理部門の二次試験は非常に難しいと言われています。

総合技術監理部門以外の各部門の合格率は10~20%で、これに合格した強者が受けるのが総合技術監理部門です。それにも関わらず合格率は約10%と低いので、技術士になろうとする人の50~100人に一人しかなれない資格ということになります。

その意味では「技術士の中の技術士」と言えますし、近い将来技術士補が制度としてなくなると言われていますので、その場合総合技術監理部門の技術士こそ真の技術士と言われる時がくるでしょう。

ビジネスマン自立実践会が著者となっている「技術士総合技術監理部門のツボ」という本を読むと、総監部門の技術士となる為の心構えや勉強の仕方が詳しく述べられています。

それを一通り読んでみて、 総監的課題解決のあるべき姿とは何かを自分なりに整理してみました。

その本で書かれているポイントは以下の3つです。但し、私なりに少しアレンジしてあります。
①公益確保に対する強い意志と熱き心を持つこと
②どんなに厳しい環境に遭遇しても決して心が折れず、周りの人間を幸せに導く
 ための冷静な分析力と判断力及び実行力を持つこと。その為に必要なのがリスク
 管理です。
③どんな課題に対しても、5つの管理の観点でトレードオフを考慮した複数の改善
 シナリオを提案でき、それらを客観的かつ総合的に比較して最適な案を提示
 できること

このうちで①は目標設定において、どんな公益向上と結びつくかが意識されているかどうかが大事ですし、もう一つの視点としては解決の方法論として公益に反することが無いかどうかのチェックも必要だと思います。

①が終わったら③に行きたいと思うのが普通の考えです。何でもそうですが、人間ついつい結論を急ぎたくなりますので、極端な場合A案とB案2つのうちいきなりどちらかを選択して突き進むというケースが、私の経験でも良くありました。

単純で影響範囲の小さな課題でしたらそれでも良い場合が確かにありますが、色々な影響因子が複雑に絡み合った課題の場合は、相当幅広い視点で検討を行う必要があります。

その場合、出来るだけ多くの解決策を提示し、それぞれに関してどんなトレードオフ関係が生じるかの分析が重要になり、それが最終案を決める場合の判断材料になります。

では、②はどういう場面において必要になるかを考えてみたいと思います。

一つは、①→③のプロセスにより実行計画を策定する過程においてリスク予測をする場合です。検討段階で予測し、更に最終案を決定した後はより緻密なリスク対応計画を立てる必要があります。

こうしたリスク予測と対応を出来ることが、いかにも総合技術監理らしい部分かなと思います。

もう一つは、上記検討プロセスの中で考えたリスク以外の重大なリスクが顕現化した場合の対応です。

こうした検討プロセスを言わば横串とすると、縦串に当たるのが5つの管理です。

5つの管理を、ブレークダウンしたより身近な項目で表すと「品質」、「製造工程」、「コスト」、「設備保守」、「人」、「情報、知財」、「安全」、「環境」になります。

課題の策定から、トレードオフに基づく複数シナリオの 検討及びリスク評価と管理全ての過程において上記管理項目それぞれについて影響因子がないかどうか、あるとすればどんな内容でどの程度の影響かを考えるのが、総合技術監理の仕事だと理解しました。

コメント

このブログの人気の投稿

新型コロナウイルス直近の状況について

前回、今のままだと懸念が大きい旨記しましたが、あれから約1カ月が 経ち傾向がはっきりとしてきました。 1カ月前に東京の新規感染者数は30~40人/日レベルだったのが、現在は200~ 300人と7~8倍に増加し、全国に至っては50~60人/日が500~600人/日と10倍 に増加しています。 残念ながら、この結果は「攻めの検査」によるものとは決して言えず、明らかに 市中感染が拡大している結果です。 昨日、政府による現状認識に関する記者会見がありました。それを見て思ったこと をまとめます。 1. 今後、爆発的に拡大したり、逆に収束したりする可能性は低く、緩やかに増加  するか、同じ水準を保つか、緩やかに減少するか3つに1つであるだろう。     但し、そのうちどれになるかは神のみぞ知る領域であるとの見解でした。  そもそも感染爆発の定義自体が曖昧な中で、このように合理的な根拠のない話を  すること自体信じがたいです。  説明に使われてたグラフの縦軸がもし日々の感染者数だとしたら、緩やかに増加  イコール指数関数的な増加です。  あと、現在は市中感染のレベルじゃないという判断をしていましたが、市中感染  の定義自体も曖昧です。そもそも、第1波の消え残り的な潜在的感染者が市中に  存在していたはずなので、もう市中感染レベルですし、そもそも客観的な感染率  を見出していない中で結論じみたことは言えないはずです。 2.一番気になるのは、いまだに対策の柱が「個人レベルへの注意喚起」と   「クラスター対策」に留まっていることです。  いわゆる第1波を経て、人々は既に相当レベルの注意をしているのに注意喚起を  強める程度では拡大速度を少しだけ緩めるだけの効果しかありません。  そもそも人間はロボットじゃないですし、それに行動目標自体があいまいな中で    当然個人ごとに解釈のずれや分布も生まれます。  怖いのは、うまくいかなかった時に、為政者側は注意喚起したのに国民がそれに    従わなかったせいだと、責任のがれに利用される可能性が大きいことです。 3.クラスター対策がうまくいくのは、あくまで感染初期です。しかもそれは、    大規模な検査による多くの陽性者の発見とセットになって初めて成功します...

コロナ感染速度試算(6)

前回までの検討を踏まえて、新型コロナウイルスへの対処の仕方について、 私なりの結論をまとめてみました。 1.流行の初期段階においては特に、検査により市中に入り込んだアクティブな   感染者をいかに早く見つけ、そしてきちんとした隔離を行うかが極めて重要   です。十分なPCR検査体制は、アクティブな感染者を早くみつけ、また感染   の急激な拡大を先延ばしする上で決定的に重要です。 2.初期段階において、検査と隔離を怠って一旦感染を拡大させてしまうと、   その後に検査能力を相当上げたとしても拡大を抑制することは出来ません。   例えば、日本における現状検査能力を他国と同様の10倍程度に上げてたと   してもほとんど抑制効果は期待できません。 3.市中感染が拡大してしまった後では、外出制限により他者との接触機会頻度   を下げることが唯一の有効な感染抑制手段となります。   その場合、当然のことながらより早い段階から、より強力に行うほど効果が   あります。 4.外出制限で見掛けの新規感染者数が大幅に減ったとしても、一旦市中感染が   拡大した後は市中にアクティブな感染者が相当数残っており、その後に外出   制限を大幅に緩和すると、そういった人たちが火元になって再び感染者数が   拡大します。 5.従って、モニタリングすべき指標は市中におけるアクティブな感染者の割合   です。この割合が高くなると、日々の感染者の増加でクラスターを追いきれ   なくなり、更に病院が過負荷となる可能性が大きくなります。 6.抗体検査は、免疫をまだ獲得していない人の割合を見出す上では価値があり   ますが、感染の現状を示すのではなくあくまで過去のことを知る手がかりで   す。 現在の生々しい状態を知るにはやはりPCRあるいはそれに準じる 精度 の   検査によって、アクティブな市中感染率を知ることが必要です。

最近の社会情勢に対する懸念

新型コロナに関する最近の情勢について懸念を書きます。 1.秋、冬に備えようというのがやたら強調されていますが、国別のデータを  見たり、WHOの見解としても、季節的な要因は明らかになっていません。  季節性のインフルエンザと同じ挙動だとする根拠の乏しい楽観的な推測に  基づく風潮なので、もっと科学的知見に基づいて政策決定を行うべきです。 2.今でも、ベンチマークを欧米諸国に置いてそれらの国に比べてどうだと  いう議論が普通になっています。企業間競争でもそうですがベンチマークを  を間違えると、得てして利益に反する結果になってしまいます。  特に新型コロナウイルスについていうと、欧米諸国と東アジアでは抗体保有率  が全く異なるので、感染の仕方等、あるいはウイルスそのものが大きく異なる  可能性があります。  ベンチマークを欧米諸国に置いていると、彼らが経済活動を再開したから  そろそろ日本も良いんじゃないかとか、死亡率がまだ低いから良いみたいな  誤った楽観主義に陥る危険性が高いです。  日本は、地理的にも地政学的にも東アジアの国だということを事実として  認め、東アジアの他の国々をベンチマークにすべきだと思います。 3.感染症は、拡大初期段階で徹底的な検査による陽性者の隔離をしないと急速  な拡大をあらかじめ防ぐことが出来ず、一旦急拡大してしまったら、半強制的  な接触機会制限、つまり経済活動の自粛をする以外、元に戻すことが出来ない  ということが未だに十分理解されていません。 4.その為には、アクティブな市中感染率をモニタリングしていないと、危機  の程度が分からず、有効な政策を打てないはずです。今の日本の態勢だと、  見かけの感染者数が増加してきた段階では「時、既に遅し」で結局急拡大を  制御出来ず、前と同じように社会的パニックを引き起こす懸念が十分にあり  ます。 5.秋冬に備えて、検査体制を拡充したり病院の受け入れ態勢を充実しようと  言われていますが、「やるべきは、今!です」。さらに、やるべきことに  ついて 総論は色々議論されたり提言されたりしていますが、具体的に何を  いつまでに どうすべきかが明らかにされていないので、実際のところ対策と  して極めて 不十分です。