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2019.9.24~25 第2回粉砕分科会(台湾)

1日目(9/24)

台湾大学構内にある「応用力学館」で開催されました。
主催は、日本の粉体技術協会と台湾セラミックス学会ですが、実質的には大阪大学の内藤先生と台湾大学の段先生の長年にわたるご交流の中でお二人が中心になって催されたシンポジウムです。

大阪大学接合化学研究所の内藤先生は、セラミックス製造工程のプロセス条件と中間製品あるいは最終製品との品質特性との影響に関し、特に夏場と冬場で湿度が異なることによって異なることを紹介されていました。村田製作所とかなり密に協力し、工程データの解析に協力されているようです。

台湾大学の段先生は、硫酸カルシウムを用いた自己修復型セラミックスについて紹介されていました。その中で、極微量のシリカを添加することで硫酸カルシウムの強度などの特性が向上することを示され興味深い内容でした。

企業の方からの発表は、最新の微粉砕装置の紹介と、粉体挙動シミュレーション技術、ナノ材料の紹介が主でした。

微粉砕装置に関しては、日本メーカ―のうちアシザワファインテックから乾式ビーズミルである ”DRYSTAR SDA" のプレゼンが、日本コークス工業(旧三井鉱山)からは "MSC-MILL" や "COMPOSI" のプレゼンが、広島メタル&マシナリーからは "UAM" や "ADV" のプレゼンが、日清エンジニアリングからは横型ジェットミルである ”CFD" のプレゼンがそれぞれありました。

この中で比較的興味深かったのは、0.2mm以下の極小ビーズを使用する目的で、スリット方式ではなく遠心分離方式でビーズを系外に出さないようにした最近の湿式ビーズミルと、粉のショートパスを防ぐ為、粉の出口にじゃま板を設けた横型ジェットミルです。但し、後者はセラミックス材料の粉砕に用いた場合、すぐ摩耗の問題が発生すると思われました。

粉体挙動シミュレーションに関しては、東北大学の加納先生(大学発ベンチャーであるPOWDER SCIENCEも運営)、東大発のベンチャー企業であるプロメテック・ソフトウエアから事例紹介がありました。これらは、私が現役を退いてから一番進歩している分野だと感じました。どちらも、DEMと呼ばれる離散要素法(または個別要素法)による数値解析で粉体挙動をシミュレーションする技術です。もちろん、まだまだ限定されたモデルでのシミュレーションですが、今後が楽しみだと思います。

日目(9/25)

現地見学として、台湾を代表する粉末冶金の会社であるPoriteと、工業技術研究院(ITRI)の二か所を訪問しました。

Poriteは元々日系の会社ですが、今では日本の工場を差し置いて該社の主力工場になっています。ここを見学させていただき、初めて粉末冶金のことを理解できました。これは、素晴らしい技術であることを実感しました。




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新型コロナウイルス直近の状況について

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