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最近の社会情勢に対する懸念

新型コロナに関する最近の情勢について懸念を書きます。 1.秋、冬に備えようというのがやたら強調されていますが、国別のデータを  見たり、WHOの見解としても、季節的な要因は明らかになっていません。  季節性のインフルエンザと同じ挙動だとする根拠の乏しい楽観的な推測に  基づく風潮なので、もっと科学的知見に基づいて政策決定を行うべきです。 2.今でも、ベンチマークを欧米諸国に置いてそれらの国に比べてどうだと  いう議論が普通になっています。企業間競争でもそうですがベンチマークを  を間違えると、得てして利益に反する結果になってしまいます。  特に新型コロナウイルスについていうと、欧米諸国と東アジアでは抗体保有率  が全く異なるので、感染の仕方等、あるいはウイルスそのものが大きく異なる  可能性があります。  ベンチマークを欧米諸国に置いていると、彼らが経済活動を再開したから  そろそろ日本も良いんじゃないかとか、死亡率がまだ低いから良いみたいな  誤った楽観主義に陥る危険性が高いです。  日本は、地理的にも地政学的にも東アジアの国だということを事実として  認め、東アジアの他の国々をベンチマークにすべきだと思います。 3.感染症は、拡大初期段階で徹底的な検査による陽性者の隔離をしないと急速  な拡大をあらかじめ防ぐことが出来ず、一旦急拡大してしまったら、半強制的  な接触機会制限、つまり経済活動の自粛をする以外、元に戻すことが出来ない  ということが未だに十分理解されていません。 4.その為には、アクティブな市中感染率をモニタリングしていないと、危機  の程度が分からず、有効な政策を打てないはずです。今の日本の態勢だと、  見かけの感染者数が増加してきた段階では「時、既に遅し」で結局急拡大を  制御出来ず、前と同じように社会的パニックを引き起こす懸念が十分にあり  ます。 5.秋冬に備えて、検査体制を拡充したり病院の受け入れ態勢を充実しようと  言われていますが、「やるべきは、今!です」。さらに、やるべきことに  ついて 総論は色々議論されたり提言されたりしていますが、具体的に何を  いつまでに どうすべきかが明らかにされていないので、実際のところ対策と  して極めて 不十分です。

新型コロナウイルスについて

新型コロナウイルスについてこれまでに検討してきたことをパワーポイント の資料としてまとめてみました。 それを踏まえ、更に最近の状況も含めて感じたことを記します。 1.マスクの着用、手洗いの徹底などで、定量的な程度は不明ですが、他者   との接触削減はあるレベルで実現しつつあると思います。 2.従って、感染拡大指数と言うべき γ の値は、当初の1.1 よりは低下して   いる可能性が高く、外出制限を緩和してもPCR検査と隔離が適切に行わ   れれば、感染の急拡大は抑制できそうです。 3.但し、検査と隔離が不徹底だと、アクティブな市中感染率が上昇し、   ある時点から再び急拡大する危険性が高まります。 4.最近のニュースの中で、北九州と東京について話題に上っていますが、   北九州に関しては攻めの検査を比較的広く行って、無症状者も含めた   あぶり出しをしているので、状況が落ち着いているように感じます。   1日当たりの検査数200件、感染者の1日当たり発見数20人で比較的   落ち着いてきていることから推定すると、現時点における北九州の市中   感染率は0.03~0.05%と推定します。 6.東京に関して言えば、市中感染率が北九州と同じレベルだとしても、   人口が北九州の10倍以上であることを勘案すると、1日の検査数で   2000件以上、発見すべき感染者数200人/日以上を達成していない   とダメなはずです。しかし、東京都のホームページ等を見ると、検査者数   は約1500人とまあまあですが、発見出来ている人数で言えば北九州と   同じ程度なので、個人的には相当やばいと感じて います。 7.小池東京都知事が、少し前に「何とか感染者を20人/日以下に抑えたい」   と話していましたが、それは非常に危険な物言いです。なぜなら、それは   発見する人数を抑えたいと同じ意味だからです。その考えだと、感染拡大   を抑制することは不可能です。 8.小池都知事に限らず、現在の感染者数に対する捉え方がマスコミも含めて   間違っています。検査によって大部分の感染者を見出せるのならそのよう   な捉え方で大丈夫ですが、新型コロナに関しては検査で捉えられるのが   一部分であることで、考え方を転換しないとダメ...

コロナ感染速度試算(7)

前回の結論で記したように、感染の急拡大を人との接触機会の大幅削減によって 一旦収束させられたとしても、次の急激な波を防ぐには、市中におけるアク ティブ な感染者の割合をモニタリングし、かつ検査体制の充実が重要です。 そこで、今回新しい生活スタイル(様式)と言われている、コロナ以前の生活と 比較してあるレベルで接触機会を減らす生活を前提に、市中感染率がある値の時 を 初期条件としてそうした生活を実践した場合に、感染拡大を防ぐことが可能か どうか 試算してみました。 新しい生活様式としては、コロナ以前に比べ30%の接触制限を前提にしました。 80%の接触制限だと、ほぼ経済活動が止まってしまうレベルですが、30%の 制限でもかなり実生活への影響があるレベルだと思います。 検査体制の充実に関しては、現状の2倍及び10倍の2ケースについて検討しま した。結果を以下の図に示します。 今回の検討において、感染の拡大を防げるのは、アクティブな感染者ベースの 市中 感染率が0.1%のときで、しかも検査能力が現在の10倍の場合だけです。 それ以外の場合、遅かれ早かれ感染が急拡大し再び接触機会の大幅制限の措置を 取らざるを得なくなってしまうのが見てとれます。 市中感染率0.1%というのは、日本の人口ベースで言えば感染者数12万人に 相当します。 これまでの検討はもちろん理論的な裏付けがあまりなく、あくまで試算的な内容 に 過ぎませんが、我々が今後目指すべき大まかな方向性を知る足がかりとなりま した。 今後さらに検証を行って、必要に応じて補足をしたいと思います。

コロナ感染速度試算(6)

前回までの検討を踏まえて、新型コロナウイルスへの対処の仕方について、 私なりの結論をまとめてみました。 1.流行の初期段階においては特に、検査により市中に入り込んだアクティブな   感染者をいかに早く見つけ、そしてきちんとした隔離を行うかが極めて重要   です。十分なPCR検査体制は、アクティブな感染者を早くみつけ、また感染   の急激な拡大を先延ばしする上で決定的に重要です。 2.初期段階において、検査と隔離を怠って一旦感染を拡大させてしまうと、   その後に検査能力を相当上げたとしても拡大を抑制することは出来ません。   例えば、日本における現状検査能力を他国と同様の10倍程度に上げてたと   してもほとんど抑制効果は期待できません。 3.市中感染が拡大してしまった後では、外出制限により他者との接触機会頻度   を下げることが唯一の有効な感染抑制手段となります。   その場合、当然のことながらより早い段階から、より強力に行うほど効果が   あります。 4.外出制限で見掛けの新規感染者数が大幅に減ったとしても、一旦市中感染が   拡大した後は市中にアクティブな感染者が相当数残っており、その後に外出   制限を大幅に緩和すると、そういった人たちが火元になって再び感染者数が   拡大します。 5.従って、モニタリングすべき指標は市中におけるアクティブな感染者の割合   です。この割合が高くなると、日々の感染者の増加でクラスターを追いきれ   なくなり、更に病院が過負荷となる可能性が大きくなります。 6.抗体検査は、免疫をまだ獲得していない人の割合を見出す上では価値があり   ますが、感染の現状を示すのではなくあくまで過去のことを知る手がかりで   す。 現在の生々しい状態を知るにはやはりPCRあるいはそれに準じる 精度 の   検査によって、アクティブな市中感染率を知ることが必要です。

コロナ感染速度試算(5)

今回は、前回と同様ある程度市中感染が広がってしまった後で、 外出制限等に より、アクティブな感染者の接触機会制限を行った場合の効果を 検討 してみました。 なお、接触制限の効果をどう反映させるかについて、検討を開始した際に用いた 指数関数の式において、例えば60%接触時間削減の場合、一日当たりの増加率 ε の値を ε の 0.4 乗に置き換えて計算をしました。同様にして、 70%接触時間 削減の場合、一日当たりの増加率 ε の値を ε の 0.3 乗に置き換え、 80%接触 時 間 削減の場合、一日当たりの増加率 ε の値を ε の 0.2 乗に置き換えて計算しま した。 初めに、市中感染率0.5%で接触機会制限をした場合の図です。 これで分かるとおり、制限を開始すると共にアクティブな累積感染者数が減少し 始め ます。但し、60%及び70%の機会制限の場合は一旦減少した後再び増加 する傾向に転じることがわかります。 これは、消え切らない残り火が再び ゆっくりと火が付き始める状況に似ています。 次に、市中感染率が1.3%及び、2.7%まで拡大した後に接触機会制限を 行ったデータを示します。 これらの図からわかるとおり、接触制限の程度が大きいほどアクティブな感染者 の増加は抑制できますが、市中感染率が高くなるほどそのの効果は 小さくなり ます。

コロナ感染速度試算(4)

前回に引き続き、PCR検査と隔離の問題について検討します。 今回は、ある程度感染が進んでしまった場合に検査件数(能力)を増大させる ことによって隔離を推し進め、感染の収束を図ることが出来るかどうか、もし 可能 だとすれば、どの程度の能力増大が必要かを検討しました。 PCR検査能力について、市中感染率がある値になるまでは現状のままとし、 その後急に増大させるプランで累積感染者数の変化を見てみました。 初めに、累積感染者数で10万人当たり490人、市中感染率で約0.5% まで感染が進んだ段階以降、検査及び隔離能力は大きく増加させた場合の結果 を下図に示します。 これで分かる通り、能力を現状の10倍に増加させてもほとんど効果がありま せん。能力を20倍、30倍と増加させることによって、感染者の拡大を徐々 に抑制でき、40倍まで増加することでやっと収束が可能となります。 市中感染率が1.3%、及び2,7%まで増大してから、それぞれ検査と隔離 能力を増大させた場合の効果を下図に示します。 これらのグラフから、感染収束に必要な検査能力は、市中感染率が1.3%の 場合で100倍、市中感染率が2.7%の場合で200倍と、市中感染が進む ほど、より大きな能力増強が必要になることがわかります。

コロナ感染速度試算(3)

前回の検討では、PCR検査を始めてから人口10万人当たり1日に1人 感染 者 を見出 して隔離を行うと仮定し、累積感染者数を計算しました。 今回、PCR検査の数を増した場合の検討を行いました。 陽性者を発見隔離できる人数を一日当たり2人、3人、4人と増した場合の累積 感染者数の 変化を、前回の1人の場合と合わせて以下の図に示します。 陽性隔離者が1人/日・10 万人の場合、4週間目までに検査、隔離が出来れば 感染の拡大を防げましたが、陽性隔離者が2人/日・10 万人の場合、その期間が 5週間に、陽性隔離者が3人/日・10 万人の場合は6週間に、それぞれ伸び ます。 陽性隔離者が4人/日・10 万人の場合は7週目に発見隔離開始によって一旦 50人 レベルで落ち着きますが、その後暫増します。これからすると、6.5週目 まで に発見、隔離が出来れば、収束させることが出来ると予想されます。 また、1日当たりの陽性隔離者が多いほど、全般に累積感染者の拡大が抑制され る 傾向がわかります。 上記の傾向を別の視点で下図のように整理してみました。代表的に100日目の 累積感染者数を求めています。 この図を見ると、感染症においては早期の検査(感染者の発見)と隔離が重要 だと いくことが改めて良く分かります。