前回、今のままだと懸念が大きい旨記しましたが、あれから約1カ月が 経ち傾向がはっきりとしてきました。 1カ月前に東京の新規感染者数は30~40人/日レベルだったのが、現在は200~ 300人と7~8倍に増加し、全国に至っては50~60人/日が500~600人/日と10倍 に増加しています。 残念ながら、この結果は「攻めの検査」によるものとは決して言えず、明らかに 市中感染が拡大している結果です。 昨日、政府による現状認識に関する記者会見がありました。それを見て思ったこと をまとめます。 1. 今後、爆発的に拡大したり、逆に収束したりする可能性は低く、緩やかに増加 するか、同じ水準を保つか、緩やかに減少するか3つに1つであるだろう。 但し、そのうちどれになるかは神のみぞ知る領域であるとの見解でした。 そもそも感染爆発の定義自体が曖昧な中で、このように合理的な根拠のない話を すること自体信じがたいです。 説明に使われてたグラフの縦軸がもし日々の感染者数だとしたら、緩やかに増加 イコール指数関数的な増加です。 あと、現在は市中感染のレベルじゃないという判断をしていましたが、市中感染 の定義自体も曖昧です。そもそも、第1波の消え残り的な潜在的感染者が市中に 存在していたはずなので、もう市中感染レベルですし、そもそも客観的な感染率 を見出していない中で結論じみたことは言えないはずです。 2.一番気になるのは、いまだに対策の柱が「個人レベルへの注意喚起」と 「クラスター対策」に留まっていることです。 いわゆる第1波を経て、人々は既に相当レベルの注意をしているのに注意喚起を 強める程度では拡大速度を少しだけ緩めるだけの効果しかありません。 そもそも人間はロボットじゃないですし、それに行動目標自体があいまいな中で 当然個人ごとに解釈のずれや分布も生まれます。 怖いのは、うまくいかなかった時に、為政者側は注意喚起したのに国民がそれに 従わなかったせいだと、責任のがれに利用される可能性が大きいことです。 3.クラスター対策がうまくいくのは、あくまで感染初期です。しかもそれは、 大規模な検査による多くの陽性者の発見とセットになって初めて成功します...
新型コロナに関する最近の情勢について懸念を書きます。 1.秋、冬に備えようというのがやたら強調されていますが、国別のデータを 見たり、WHOの見解としても、季節的な要因は明らかになっていません。 季節性のインフルエンザと同じ挙動だとする根拠の乏しい楽観的な推測に 基づく風潮なので、もっと科学的知見に基づいて政策決定を行うべきです。 2.今でも、ベンチマークを欧米諸国に置いてそれらの国に比べてどうだと いう議論が普通になっています。企業間競争でもそうですがベンチマークを を間違えると、得てして利益に反する結果になってしまいます。 特に新型コロナウイルスについていうと、欧米諸国と東アジアでは抗体保有率 が全く異なるので、感染の仕方等、あるいはウイルスそのものが大きく異なる 可能性があります。 ベンチマークを欧米諸国に置いていると、彼らが経済活動を再開したから そろそろ日本も良いんじゃないかとか、死亡率がまだ低いから良いみたいな 誤った楽観主義に陥る危険性が高いです。 日本は、地理的にも地政学的にも東アジアの国だということを事実として 認め、東アジアの他の国々をベンチマークにすべきだと思います。 3.感染症は、拡大初期段階で徹底的な検査による陽性者の隔離をしないと急速 な拡大をあらかじめ防ぐことが出来ず、一旦急拡大してしまったら、半強制的 な接触機会制限、つまり経済活動の自粛をする以外、元に戻すことが出来ない ということが未だに十分理解されていません。 4.その為には、アクティブな市中感染率をモニタリングしていないと、危機 の程度が分からず、有効な政策を打てないはずです。今の日本の態勢だと、 見かけの感染者数が増加してきた段階では「時、既に遅し」で結局急拡大を 制御出来ず、前と同じように社会的パニックを引き起こす懸念が十分にあり ます。 5.秋冬に備えて、検査体制を拡充したり病院の受け入れ態勢を充実しようと 言われていますが、「やるべきは、今!です」。さらに、やるべきことに ついて 総論は色々議論されたり提言されたりしていますが、具体的に何を いつまでに どうすべきかが明らかにされていないので、実際のところ対策と して極めて 不十分です。